「順調です」で終わる進捗確認。技術系の若手リーダーは何を聞く?

開発チームの若手リーダーとメンバーが、設計資料と工程ボードを使って未確認事項を話し合うイメージ
成果物と未確認事項を見ながら、次の行動を一緒に決める。画像はAI生成のイメージです。

リーダー育成

「順調です」で終わる進捗確認。
技術系の若手リーダーは何を聞く?

「順調」の中身を確かめ、必要な判断と支援を決める。

「順調です」という返事だけで、仕事の状態は判断できません。技術系の若手リーダーにまず身につけてほしいのは、何が終わり、何が決まらず、どこで支援が必要なのかを確かめる力です。

若手リーダーを育てるなら、私は、この確認の仕方を研修で扱うべきだと考えています。自分の担当業務を進められる人でも、メンバーの仕事を任されれば、その説明から判断に必要な情報を引き出さなければなりません。作業の状況と未解決の問題を整理し、必要な対応を決める。その経験を、研修と職場の両方で積んでいきます。

開発・設計の現場で何を確認し、その確認の仕方を研修でどう育てるか。今回は、この点を取り上げます。

この記事の要点

  • 進捗確認では、成果物の状態と、仕事を止める未確認事項を捉える。
  • 担当者の説明を聞き、リーダーが引き受ける判断や調整を明確にする。
  • 研修後の質問・対応を振り返り、確認の仕方がどう変わったかを確かめる。

「順調」と判断した根拠を聞く

設計書を書き進めていることと、次の工程へ渡せることは同じではありません。ページが埋まっていても、前提となる仕様が決まっていなければ、その後に修正が必要になるかもしれません。試験項目が揃っていても、合否を判断する基準が曖昧なら、試験の準備は残っています。

そこで「どれくらい終わった?」と聞くだけでなく、担当者が何をもって順調と判断したのかを確かめます。設計書や試験項目を見ながら、次の三つを聞くと、確認する内容がはっきりします。

  • どこまで確認できているか。 作成した箇所と、内容を確かめた箇所を分けて説明してもらう。
  • 何が決まっていないか。 未確認の仕様、他部署の回答待ち、判断に迷っている点を挙げてもらう。
  • 次に誰が何をするか。 担当者が進めることと、リーダーが支援することを決める。

私が重視するのは、報告を聞いたあとに、必要な判断と行動が明確になったかどうかです。「予定どおり」という言葉を受け取っても、判断待ちが残っているなら、そこを確認する仕事がリーダーにはあります。

技術的な助言の前に、止まっている理由を確かめる

技術に詳しいリーダーほど、相談を聞くと解決方法が頭に浮かぶでしょう。その知識は強みです。ただ、仕事が止まっている理由をつかむ前に助言すると、担当者が本当に困っていることを聞き逃すおそれがあります。

例えば、仕様の解釈に迷っているという相談でも、技術的に分からないのか、関係者との合意が取れていないのかで、必要な対応は変わります。方式の候補は決まっていて、選んでよい権限がないだけかもしれません。

「どの点で判断が止まっているのか」「誰の確認があれば進められるのか」を聞き、担当者の説明を整理します。そのうえで技術的な助言をする、他部署と調整する、上司へ判断を求めるなど、リーダーが引き受けることを決めます。

問題が出てきたときの反応も見直したいところです。「なぜ今まで報告しなかった」と問い詰める前に、まず現在の状況と、納期・品質への影響を確かめる。対応を決めた後で、もっと早く共有できる段階がなかったかを振り返ります。緊急時には、対話を続けるより先に指示や上司への相談が必要な場合もあります。

こうした対応を、本人の性格や経験だけに任せていては、育成の課題が曖昧なままです。何を聞き、どう判断し、どのように相手へ返したのか。行動として捉えれば、研修で練習することも具体的になります。

研修で、リーダーの確認の仕方を見直す

リーダー育成アカデミーでは、役割認識や判断力、PDCAによる仕事の進め方、目標と行動の共有、コーチングなどを扱います。技術系の若手リーダーの育成では、これらを開発・設計の仕事に当てはめて練習できるようにします。

今回の課題に合わせた演習案を挙げます。設計作業の状況と未確認事項を記したケースを用意し、担当者とリーダーに役割を分けて、進捗確認の対話を行います。担当者には、そのケースをもとに「順調です」と報告してもらいます。リーダー役は、何を質問すれば必要な判断ができるのかを考えながら、説明を聞きます。

対話の後は、成果物の確認状況を聞けたか、判断待ちを捉えたか、次に行うことを決めたかを確かめます。担当者役からも、「何を答えればよいか分かったか」「困っていることを話せたか」という意見を受けます。

役割を交代すると、自分が使っていた質問を、報告する側から見直せます。「大丈夫?」と聞かれたときに、どこまで説明すればよいか迷う。その感覚も、質問の仕方を変える手がかりになります。ここで示した演習は設計例であり、実際には対象者の仕事や課題に合わせて内容を組み立てます。

職場での確認がどう変わったかを見る

演習で質問の仕方を理解しても、職場で同じようにできるかは別途確かめる必要があります。自分の担当業務も忙しければ、確認を急いで済ませることもあるでしょう。

研修後には、使う場面を一つ決めます。例えば「次の設計レビュー前に、成果物の確認状況と判断待ちを担当者と整理する」。実践した後は、何を質問し、どんな情報が分かり、それを受けてどう対応したかを記録します。

次の研修では、その記録をもとに振り返ります。私は、こうした実践の振り返りでは、本人の「意識した」「うまくいった」という感想に加えて、質問と対応の中身を確かめることが重要だと考えています。確認の仕方が変わったと言えるのは、どの行動からか。残っている課題は何か。その根拠を本人と共有したいのです。

質問が抽象的なままなら、成果物を見ながら聞く練習に戻る。助言を急いでいたなら、担当者の説明を最後まで聞き、判断に必要な情報を整理する練習をする。職場の上司にも実践を見てもらい、本人の振り返りと照らし合わせれば、次に取り組む課題を絞れます。

人間力教育センターでは、相手の状況を受け止め、責任を持って判断し、周囲と協力する力を、仕事のスキルとともに育てたいと考えています。継続した研修では、職場で試した経験を次の学習に持ち込み、実際の行動を見直す時間を設けます。

技術系の若手リーダーに、何を任せたいか

若手リーダーに進捗確認を任せたいのであれば、報告を聞く手順だけでなく、未解決の問題を捉え、必要な判断や調整を行うところまで育成の対象にします。自社では、そのどこでつまずいているのか。そこが研修を考える出発点です。

人間力教育センターでは、開発・設計チームなど、対象者の職種と役割に合わせて、リーダー育成アカデミーの学習テーマと実践課題を設計します。進捗確認で問題を捉えられない、技術的な助言はできても調整を抱え込むなど、今の職場で起きている課題をお聞かせください。回数や実施時期が決まる前でも相談できます。

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