「任せたはず」が、なぜ自分に戻ってくる?

リーダー育成
「任せたはず」が、
なぜ自分に戻ってくる?
仕事を任せる力は、任せた後の関わり方で育つ。
メンバーに依頼した資料が、締切の前日に戻ってくる。内容を見て説明を加え、構成を直し、最後は自分で仕上げる。「これなら、最初から自分でやった方が早かった」。そんな場面はありませんか。
任せた仕事が戻ってくると、相手の経験や能力が気になるものです。同時に、任せる側にも確かめたいことがあります。何を目指し、どこまで本人が判断し、いつ一緒に確認するのか。そのすり合わせは、できていたでしょうか。
この記事の要点
- 任せる目的・判断できる範囲・進める条件・確認する場面を共有する。
- 相談では判断の過程を聞き、必要な支援と次の行動を一緒に決める。
- 実務と研修の振り返りをつなぎ、任せる側の力も継続して育てる。
「よろしく」の中身は、同じでしたか?
例えば、新しい仕組みを導入するための比較資料を任せる場面を考えてみます。リーダーは「候補を比べ、おすすめの案と理由まで示してほしい」と思っていた。一方、メンバーは「各候補の情報を集め、一覧にすればよい」と受け取っていた。
どちらも「比較資料をつくる」という同じ言葉を使っています。それでも、完成したと考える状態は違います。これは説明用の例ですが、手戻りが起きたときには、こうした認識の違いがなかったかを確認できます。
任せるときに共有したいのは、作業名と締切に加えて、その仕事で実現したい状態です。「何をつくるか」から一歩進めて、「誰が、何を判断できればよいか」まで話してみてください。
任せる前に、四つをそろえる
細かな手順をすべて決める必要はありません。本人が考えて進めるための前提として、次の四つを確かめます。
- 目指す状態:誰に、何が伝わり、どんな判断や行動につながればよいか。
- 任せる範囲:本人が決めてよいことと、リーダーの判断が必要なことは何か。
- 進める条件:期限、使える時間、必要な情報や協力者はそろっているか。
- 確認する場面:いつ途中経過を見せ合い、どんな変化があれば早めに相談するか。
先ほどの比較資料なら、「候補の比較と推奨案の作成までを任せる。採用する案の最終決定はこちらで行う。まず比較する項目が決まった段階で一度話そう」と具体化できます。
伝えた後には、「どんな順番で進める予定?」と本人の考えを聞きます。リーダーの説明が相手にどう届いたかを確認でき、必要な情報や支援も見つけやすくなります。
相談されたとき、仕事まで引き取っていませんか?
「こちらの案で進めてよいでしょうか」と聞かれたとき、すぐに答えを出し、そのまま自分で修正を始めてしまう。忙しいときほど、そうした対応になりがちです。
そこで一呼吸置き、「その案を選んだ理由は?」「ほかの案と比べて、どこで迷っている?」と、判断の過程を聞いてみます。必要な情報が足りないのか、比較の基準が曖昧なのか、本人には決められない条件があるのか。支援すべき点を分けて考えられます。
経験が浅く、考えるための手がかりがない場合には、見るべき点や具体例を示すことも必要です。相談のたびに一人で考えさせることが、育成になるとは限りません。
話した最後に、「では、次に何をするか」を本人と確かめます。リーダーが判断を引き受ける部分と、本人が引き続き進める部分をはっきりさせる。その積み重ねが、次に任せられる範囲を考える材料になります。
完了したら、成果物と任せ方を振り返る
仕事が終わったときは、出来栄えに加えて、どの場面で判断し、どこで立ち止まったかも振り返ります。
「自分で決められたのはどこだった?」「最初に分かっていれば進めやすかったことはある?」と本人に聞く。リーダーも「途中で条件を変えてしまった」「確認する時期が遅かった」など、自分の関わり方を見直します。
そのうえで、次は「比較項目の設定から任せる」「初めての相手との調整は一緒に行う」と、任せる範囲や支援を調整します。毎回同じ任せ方を続けるのではなく、本人の経験と仕事の難しさに合わせて変えていくのです。
一つの仕事が終わったときに、次は何を任せられるか。その話ができれば、実務の経験を次の成長につなげられます。
リーダー自身にも、試して見直す機会を
任せる目的や範囲を整理する。相手の考えを聞く。必要な場面では判断し、支援する。こうした行動を仕事の中で使い分けるには、リーダー自身も練習と振り返りを重ねる必要があります。
人間力教育センターのリーダー育成アカデミーでは、判断力、PDCAマネジメント、伝え方、チーム・コミュニケーションなどを、複数回の学びと実践を通じて育てます。各回の演習や事後課題、振り返りをつなぎ、現場での関わり方を見直していきます。
今回のテーマなら、例えば一つの仕事を選び、「任せる範囲と途中の確認時期を共有してみる」といった実践が考えられます。次の学びの場では、伝えた内容、相手の反応、自分が口を出した場面を持ち寄り、講師や他の受講者の視点も借りて、次に変えることを決める。これは、任せ方を育てる実践課題の一例です。
相手の立場を考えること。自分の思い込みに気づくこと。必要な責任を引き受けながら、相手の成長を支えること。人間力教育センターでは、こうした人間力と、判断・対話・仕事の進め方のスキルを結びつけて育てることを大切にしています。
「自分でやった方が早い」から、一歩先へ
まずは次に任せる仕事を一つ選び、「どこまで本人が決めてよいか」「いつ一緒に確認するか」を言葉にしてみてください。完了後には、その決め方や支援が役立ったかを、本人と確かめてみましょう。
リーダーが仕事を抱え込み、メンバーに任せる機会をつくれない。任せ方や育て方が、個人の経験に頼りきりになっている。そんな課題があれば、現場の状況をお聞かせください。
人間力教育センターでは、各社がリーダーに求める役割や育成課題に合わせ、研修テーマ、実践課題、振り返りの進め方を組み合わせてご提案します。対象者や回数が固まる前でも、日々の仕事で起きている場面からご相談いただけます。