同行営業を「見学」で終わらせない。若手営業リーダーが実践する2つのこと

リーダー育成
同行営業を「見学」で終わらせない。若手営業リーダーが実践する2つのこと
商談前に仮説と質問を組み立て、商談後に顧客の言葉で確かめる。
営業系の若手リーダーに任せたいのは、自分で商談をまとめることだけではありません。後輩が顧客の話を聞き、課題を捉え、次の提案を考えられるよう支援することも役割です。
ところが同行営業では、説明も質問も結論もリーダーが引き受け、後輩は記録係のまま商談を終えることがあります。商談が進んだとしても、それだけでは後輩が次に何をできるようになったのかは分かりません。私は、同行を「先輩の話し方を見せる時間」ではなく、後輩に顧客と向き合う役割を渡し、その経験を次の商談へつなぐ時間として設計したいと考えています。
この記事の要点
- 商談前に顧客課題の仮説を立て、確かめる質問を設計する。
- 質問の目的と後輩に任せる場面、リーダーが引き取る判断を共有する。
- 商談後は仮説と顧客の言葉を照らし、次の行動を決める。
ところが同行営業では、説明も質問も結論もリーダーが引き受け、後輩は記録係のまま商談を終えることがあります。商談が進んだとしても、それだけでは後輩が次に何をできるようになったのかは分かりません。私は、同行を「先輩の話し方を見せる時間」ではなく、後輩に顧客と向き合う役割を渡し、その経験を次の商談へつなぐ時間として設計したいと考えています。
まず渡したいのは、商談の一部分
後輩に商談を丸ごと任せれば育つ、というものではありません。顧客との関係や案件の段階、後輩の経験によって、任せられる範囲は変わります。リーダーは商談全体の責任を持ちながら、後輩が担う仕事を一つ決めます。
例えば、顧客の困りごとを聞く場面を任せるなら、訪問前に「今日は何を聞くか」まで一緒に考えます。価格や納期など、その場で確約できない話が出たときは、誰がどのように引き取るかも決めておきます。役割を渡すことと、判断の責任を放すことは別です。
商談前後にする、二つのこと
1.仮説を立て、後輩が聞く質問を一緒に設計する
商談前の打ち合わせで、後輩に「何か質問してみて」と伝えるだけでは、何を確かめるために聞くのかが曖昧です。質問を任せる前に、顧客の状況やこれまでのやり取りから、課題についての仮説を立てます。
例えば、「作業時間が長いのは入力そのものより、確認や承認を待つ時間が影響しているのではないか」と考えたとします。この仮説は結論ではありません。顧客に確かめるための出発点です。ここから「現在の業務で、時間がかかっていると感じるのはどの工程ですか」と尋ねれば、顧客自身の説明を聞けます。「承認待ちが多くて困っていますよね」と決めつけると、相手をこちらの見立てに誘導しかねません。
リーダーは、後輩と「何を知りたいのか」「そのためにどんな聞き方をするか」を訪問前に共有します。顧客の答えが仮説と違えば、質問を重ねて見立てを修正することも伝えておきます。仮説に合う答えを引き出すことが目的ではなく、顧客の言葉をもとに課題を捉え直すことが目的です。
そのうえで、後輩に任せる場面を具体的に決めます。例えば「現状の業務で時間がかかる工程を聞くところはあなたに任せる。金額と納期の判断は私が引き取る」と役割を分けます。後輩は質問の目的を持って顧客と話せますし、判断が必要な場面で誰が対応するかも明確になります。
2.訪問後に、仮説と顧客の言葉を照らして次の一手を考える
商談後に「どうだった?」と聞くだけでは、感想の交換で終わることがあります。まず顧客が実際に話したことを振り返り、そこから何を考え、次に何をするかを整理します。
例えば、次の順で確認します。
- 顧客は、どんな言葉で困りごとや希望を話していたか。
- その言葉は、訪問前の仮説をどう確かめたか。ほかに考えられる見立てや、まだ確認できていないことは何か。
- 次の提案までに、誰が何を確認するか。
顧客の発言と、こちらの解釈を分けるのがポイントです。「予算が厳しい」と言われたときも、訪問前の仮説に無理に当てはめず、予算上限の問題なのか、導入時期や優先順位の問題なのかを確かめます。後輩には、顧客のどの言葉を根拠にそう考えたのかを説明してもらいます。仮説を修正する必要があれば、次の商談で何を聞くかを一緒に決めます。
この振り返りでは、受注できたかどうかだけで後輩の行動を評価しません。訪問前の仮説を持って質問を設計できたか、顧客の発言と自分の解釈を分けられたか、答えに応じて次の働きかけを決められたかを見ます。
「任せた」で終わらせず、次の商談へつなぐ
最初の同行では顧客の要望を聞く役割を任せ、次は聞いた内容を整理して提案の一部を説明してもらう。後輩が経験を積むにつれて、任せる範囲を少しずつ広げます。商談後には本人の振り返りだけでなく、リーダーが見た行動も共有し、次の訪問で試すことを一つ決めます。
研修でこの力を扱うなら、知識を説明して終えるのではなく、顧客情報から仮説を立て、質問を設計し、商談後に仮説と実際の発言を照らして次の行動を決めるところまで、一連の演習として練習できます。これは今回の課題に合わせた設計例です。職場では実際の商談で試し、次の学習機会に「何を任せたか」「顧客の反応をどう捉えたか」「次に何を変えるか」を持ち寄ります。上司にも一度同行や振り返りを見てもらえば、本人の自己評価だけでは見えにくい点を話し合えます。
人間力教育センターのリーダー育成アカデミーは、学びと現場での実践、振り返り、次の行動をつなぐ継続型のプログラムです。顧客志向や提案力を含め、各社の課題に応じたテーマを組み込めます。若手営業リーダーに商談同行を任せているものの、後輩が経験を積めていない。そんな課題があれば、対象者の役割や商談の進め方に合わせた育成についてご相談ください。実施時期や回数が決まっていない段階でもお問い合わせいただけます。