明日から意識します。その研修、翌週どうなりましたか?

研修効果・育成設計
明日から意識します。
その研修、翌週どうなりましたか?
学びを行動に変える、実践目標のつくり方
研修の最後に受講者が記入する振り返りシート。その「実践目標」欄では、「明日から意識します」という表現をよく目にします。学んだことを仕事に生かそうとする言葉に、教育担当者としても期待が膨らみます。ところが翌週、「何か試してみましたか?」と聞くと、「忙しくて、まだ……」。そんなやり取りに、心当たりはないでしょうか。
ここで確かめたいのは、本人のやる気だけではありません。シートに書いた目標から、「どの仕事で、何を試すか」まで具体的に思い描けていたでしょうか。今回は、研修後の「意識します」を、職場で試せる一歩に変える方法を考えます。
この記事の要点
- 「意識します」に、試す場面・具体的な行動・振り返りを加える。
- 本人が選んだ行動を一つ試せるよう、上司と実践の機会をつくる。
- 翌週は最初の一歩を確かめ、その後も目標と支援を見直す。
「意識する」は、悪い目標?
「相手の立場を意識します」「積極的にコミュニケーションを取ります」「学んだことを業務に生かします」。どれも、研修で得た大切な気づきです。
ただ、その言葉だけを翌朝の自分に渡しても、何から手をつければよいか迷ってしまいます。目の前には、返信を待つメール、会議、いつもの仕事。学びを使う場面が決まっていなければ、試すきっかけをつかめないまま一日が終わることもあるでしょう。
「意識します」と書けたら、もう一歩。「では、次の仕事で何を変えてみますか?」と問いかけてみてください。
立派な目標より、来週の予定に入る目標を
「コミュニケーション力を高める」は、目指す方向としては大切です。ただ、来週の実践目標にするなら、もう少し小さくしてみます。
来週月曜日の朝会で、担当案件の進捗を報告するときに、最初に結論を一文で伝える。
これなら、使う場面と、その場で取る行動が浮かびます。「次の朝会で一度試してみよう」と予定にも入れられます。
目標を考えるときは、次の三つをそろえるのがおすすめです。
- 場面: いつ、どの仕事で試すか。
- 行動: その場で、いつもと何を変えるか。
- 振り返り: いつ、何を手がかりに確かめるか。
先ほどの目標なら、「朝会の後に、結論から話せたか、上司からどんな質問があったかを一行メモする」まで決めておく。実践と振り返りが、一続きになります。
なお、「全員を納得させる」のように、相手の反応まで目標にすると、本人だけでは達成を決められません。目標には自分が取れる行動を書き、相手の反応は、その行動を見直す手がかりにします。
「意識します」を書き換えてみると
たとえば、次のような書き換えが考えられます。いずれも、目標づくりを説明するための例です。
「相手の話をよく聴くようにします」
来週の部下との面談で、助言をする前に「今、いちばん困っていることは何ですか?」と聞き、答えを最後まで聴く。面談後に、助言を急がずに聴けたか、新しくわかったことは何かをメモする。
「顧客目線を意識します」
次回の顧客打ち合わせで、要望の背景にある業務上の困りごとを一つ質問する。打ち合わせ後に、確認できたことと、まだわからないことを分けて記録する。
「わかりやすい文章を心がけます」
明日送る社内の依頼メール一通で、冒頭に依頼内容と期限をまとめる。送信前にその二つが書けているかを確認し、返信で追加説明を求められた点を振り返る。
どれも、大きな決意を書いた目標ではありません。実際の仕事で一度試し、どうだったかを話せる目標です。まずは、自分の課題に合う行動を一つ選ぶところから始めてみましょう。
上司の「どうだった?」を、少し変える
受講者が目標を決めても、それを試す機会がなければ、実践にはつながりません。職場の上司にもできることがあります。
研修から戻ったときは、「勉強になった?」に加えて、「来週の仕事なら、どこで使えそう?」と聞く。本人と相談して、会議での報告や顧客への説明など、試せる場面を一つ決めておきます。
そして翌週は、「意識できた?」から、次の問いへ。
- どの場面で、何を試してみた?
- やってみて、何がわかった?
- 次は、どこを少し変えてみる?
試せなかったときも、理由を一緒に確かめます。機会がなかったのか、忙しい中では目標が大きすぎたのか、やり方がわからなかったのか。それによって、次の支援は変わります。
「顧客と話す機会がなかった」なら、次の打ち合わせへの同席を考える。「結論を一文にできなかった」なら、報告前に一緒に整理してみる。未実施という結果も、目標や職場の支援を見直す材料になります。
研修の最後に、「翌週の約束」をつくる
教育担当者が研修を設計するなら、終了前に、翌週の仕事を思い浮かべて目標を書く時間を確保してみてください。本人が選んだ目標を、隣の受講者に説明してみるのも一案です。
「それは、いつ使えそう?」「試した後、何を見ればわかる?」。こうした問いを交わすと、曖昧な部分に気づけます。上司の協力が必要なら、何を相談するかも書き添えます。
振り返りも、最初から長い報告書にする必要はありません。「試したこと」「わかったこと」「次に変えること」を短く残し、翌週の面談やチームの共有時間で話す。いつ振り返るかを先に決めることが、実践を支える準備になります。
ただし、翌週は最初の実践を確かめる目安です。一週間で、すべての研修成果を判断する必要はありません。実務で使う機会に合わせて確認し、その後も試しながら目標を見直していきます。
「意識します」の、その先へ
人間力教育センターのB.A.G.診断では、研修前後の現在地や変化、残課題を可視化し、次の実践と組織の育成につなげます。見えてきた課題を、本人が取り組む一つの行動と、職場でのフォローアップへ具体化していくことが大切です。
研修後の目標欄に「明日から意識します」と書かれていたら、その気づきを出発点に、もう一つだけ聞いてみてください。
「では、来週のどの仕事で、何を一つ試してみますか?」
翌週に「やってみたら、こんなことがわかりました」と話せる。その小さな実践を、研修の最後から準備しておきませんか。