「もっと訪問しよう」で、営業会議を終わらせない。

リーダー育成
「もっと訪問しよう」で、営業会議を終わらせない。
訪問頻度を上げること自体を営業の目的にしていては、これからの営業は行き詰まります。顧客が何を求めているのかを発見し、それに応える提案を重ねる。営業リーダーが増やしたいのは、この働きかけの頻度です。
私は、若手営業リーダーの育成では、訪問件数を管理する力に加え、メンバーが顧客を理解し、提案を具体化するために支援できる力を育てたいと考えています。そのためには、営業会議で何を報告させ、何を問い、次にどんな行動を決めるかを見直す必要があります。
この記事の要点
- 訪問頻度が目的になる状態を見直し、顧客が求めるものの発見を営業の起点にする。
- 仮説を質問で確かめ、顧客の目的に合う提案を重ねる頻度を上げる。
- 営業会議と研修で、発見・提案・顧客の反応・次の改善をつなぐ。
訪問件数の達成が、目的になっていないか
訪問件数や訪問頻度をKPIに置く営業組織では、「今週は何件回ったか」「来週は何件増やすか」が会議の中心になることがあります。活動量を把握する指標として使えても、件数の達成が目的になれば、顧客の状況が分からないまま訪問だけを重ねることにもなります。
会った回数が増えても、顧客の何が分かり、どんな役に立てたのかを説明できなければ、次の提案を考える材料は増えません。訪問を増やすという指示だけでは、この問題は解決しないのです。
営業リーダーが会議で確かめたいのは、「その訪問で顧客が求めるものを何か発見できたか」「分かったことを受けて、どんな提案をしたか」という点です。行動の意味まで扱うことで、活動量を営業の成果へ結びつける道筋を考えられます。
顧客が求めるものを、仮説を持って発見する
顧客が求めるものは、最初から商品の名前や具体的な要望として語られるとは限りません。「システムを入れ替えたい」という相談でも、その背景には、月末の集計を早く終えたい、数字の修正作業を減らしたいといった仕事上の目的があるかもしれません。
ここからは、企業へ業務システムを提案する営業を例に考えます。担当者が「集計に時間がかかると聞いたので、新しいシステムの機能を説明しました」と報告したとします。リーダーは、機能を説明した事実に加え、どの作業で、何に時間がかかっているのかを聞きます。そこが分からなければ、何を提案すべきかも絞れません。
訪問前には、これまでの会話や業務の情報から仮説を置きます。たとえば「複数の資料から同じ数字を入力し直すことが負担なのではないか」。この仮説から、「集計を始めてから完了するまで、どの作業に時間がかかっていますか」と確認する質問を設計します。実際には入力後の確認や修正に時間がかかっていると分かれば、見立てを変えます。
私は、このように相手の仕事を理解し直す過程を重視しています。仮説は、こちらの商品を売る理由を顧客に認めてもらうためのものではありません。顧客が何を実現したいのか、その妨げは何かを確かめ、提案の焦点を定めるために使います。
顧客に合う提案を重ねる、その頻度を上げる
顧客の状況が分かったら、次に会う約束だけで終わらせず、何を提案するかを考えます。集計後の修正が負担なら、その原因と対処方法を整理する。運用を変える案と、システムで支援する案を比べる。必要に応じて、技術担当と確認する場を設ける。顧客が求める状態へ近づくための具体案にします。
提案を出した後も、顧客の反応から確かめます。「その方法なら実現できそうだ」と思えた点はどこか。まだ解決しない問題は何か。新しく分かったことを次の提案へ反映する。この往復を、顧客の検討の進み方に合わせて重ねます。
増やしたいのは、顧客が求めるものを発見し、それに応える提案を届ける機会です。提案書の本数を新しいノルマに置き換えるだけでは、同じ問題が起きます。何を発見し、どんな提案に変え、顧客から何が分かったかまで確かめてこそ、次に増やすべき行動が見えてきます。
営業会議で、次の提案とリーダーの支援を決める
営業会議の問いも、この考え方に合わせます。「あと何件訪問できる?」に加え、「顧客の仕事について、新しく何が分かった?」「そこから、どんな提案を考えている?」「提案を具体化するために何が足りない?」と聞きます。
担当者に「考えておいて」と任せるだけでは、提案が止まることもあるでしょう。リーダーは、担当者が次に確かめることと、自分が支援することを分けて決めます。この例なら、担当者は修正作業が生じる条件を顧客に確認し、リーダーは技術担当との相談を調整する。確認した結果を踏まえて、いつまでにどんな案を顧客へ示すかを合意します。
次の会議では、訪問件数とともに、その提案が顧客の求めるものに近づいたかを振り返ります。担当者の説明が足りなければ、顧客の発言と自分の解釈を分けて整理する。提案が商品説明に戻っていれば、顧客が実現したいことから内容を組み直す。会議を、次の働きかけを具体化する時間にしたいのです。
研修と職場実践で、営業の見方を変えていく
この関わり方は、講義で「顧客志向が大切」と伝えるだけでは身につきません。若手営業リーダーが、担当者の報告から不足している情報を見つけ、仮説を置き、提案に必要な行動と支援を決める練習をします。
今回の課題に合わせた演習例なら、訪問記録と顧客の発言を記した架空の案件メモを使います。リーダー役と担当者役で、顧客が求める状態、まだ確かめていないこと、次に示す提案を整理します。観察役は、機能や価格の話へ急ぐ前に、顧客の仕事と目的を捉えられたかを見ます。実際の演習は、商材や対象者の役割に合わせて設計します。
研修後は、職場の案件会議で一つの商談を選んで試します。顧客について発見したこと、提案した内容、反応、次に変えることを記録し、次の研修で持ち寄ります。共有には、顧客名や社外秘の情報を除いた記録を使います。上司にも会議の進め方を見てもらい、訪問を増やす指示に戻っていなかったか、提案づくりを支援できたかを振り返ります。
私が若手リーダーの成長として確かめたいのは、メンバーとともに顧客の求めるものを捉え、提案を変えられるようになったかです。結果が出なかった場面でも、その理由から何を学び、次の働きかけをどう変えたかまで見ます。
営業リーダーに、どんな行動を増やしてほしいか
人間力教育センターのリーダー育成アカデミーでは、チームの実行計画、意思決定、メンバーとの対話などを、各社の課題に合わせて研修と職場実践へ組み込みます。顧客の仕事に関心を持つ姿勢、担当者の考えを受け止める対話、具体的な提案へ進める判断を、継続した実践と振り返りの中で育てます。
訪問件数の管理から、顧客が求めるものの発見と提案を重ねる営業へ。その転換を若手リーダーに担ってほしいと考えているなら、今の営業会議や育成で感じている課題をお聞かせください。リーダーに任せたい役割を踏まえ、研修と実践課題を一緒に設計します。