人間力コラム

ある接客サービスでの人間力    09. 5. 28

人間力とは、大それた定義や特別なスキルではない。当たり前のことが当たり前に出来ること。ただ、それだけなのである。先日オープンして間もない、ある飲食店に行ったときのことである。店内は、大勢の客さんで賑わっていた。しかし、接客において不慣れなスタッフがあちらこちらで、小さなトラブルに追われていた。
「これ頼んだのと違うよ!」
「さっき頼んだのは、まだ?」
「スプーンがないんですけど」
お客さんの小さな不満の声がするたびに、スタッフは「すみません」とあたふたと動き回っていた。このような明確なリクエストに対して反応している分には、オープンしたばかりだし、込んでいるから仕方ないかと客の方も了解済みのようであった。

問題は、それ以外のところで発生していた。
飲み物のお変わり、追加のオーダーをしようと目でスタッフを追い、手を上げているお客を一部のスタッフは見て見ぬ振りをしている。
それは、いま自分が受けた注文やクレームの対応に追われ、新たなリクエストを受ける余裕がないから気づいていない振りをしてその場をやり過ごそうとしているようだった。
確かにそうしたくなる気持ちは分らないわけではないが「配膳ミス」と「リクエストの無視」を比較した場合、明らかに後者はクレームや店の評価を落とす。

人は無視をされることが精神的に苦痛やダメージを受けることが知られている。
子供が親に怒られると分ってわざと悪いことをするのは、心理学上親との関わりを求めているサインであるといわれる。それと同様に、接客の場面でお客はスタッフから無視されることは小さな苦痛なのだ。
ひとこと「申し訳ございません、ただいまお伺いしますのでしばらくお待ちください」と笑顔を添えて言えるかどうかが、その人の人間力。
きわめて当たり前のことを当たり前に行っているだけだが、相手の心に響く対応となる。