人間力コラム

マニュアルVS人間力    09. 4. 28

「いらっしゃいませ、こちら、季節のお勧めメニューです。是非召し上がってみて下さい」と、メニューを置いていった店員の後ろ姿を見ながらそのお客は連れの仲間に「この前来た時あの店員に俺は、牡蠣が苦手だからお勧めメニューはいいですって言ったのに、全然覚えちゃねえよ」そんな会話を、ある飲食店の隣のテーブルで聞いた。

サービス業には「接客マニュアル」や「業務マニュアル」というものがある。マニュアルは、短期間で誰もが均一の品質と同様の対応が行えるように作られたものだ。おそらくあの店員さんもまだ入店間もないアルバイトで、そのマニュアルに沿った対応をしたのだろう。
マニュアルに依存した弊害が今いたる所で起きている。一般にマニュアルの弊害が表面化するときは、消費の紐がきつくなったり、サービスの差別化が難しくなったり、業界内の競争が厳しくなったりという外部環境の変化が起きるときだ。
市場の飽和、世界的金融不安、不安定な雇用情勢などまさに、今は逆境の嵐。

そんな状況でも業績を伸ばす会社はある。理由のひとつは、想像力豊かな人材にある。相手の期待を超えるアイディアやセンスから生まれる顧客の感動を仕事の喜びとし、そこからさらに相手の満足を引き出す知恵を働かせるサイクルがそれを支える。
ミスを極力抑えるマニュアル偏重型の組織と個々の人間力を昇華させられる組織では、これからの企業力に大きく影響を与えることになる。
「牡蠣が苦手なお客様には、初がつおのお作りが是非お勧めです」この一言が言えるかどうかは大きい。