ある日、研修の休憩時間に営業職の受講者からコミュニケーションに関する相談を受けたときのこと。
その方は、研修中も非常にまじめでどちらかといえば、おとなしいタイプでした。
彼の営業先のあるお客さまは、話し好きで商談や提案にいくといつも1時間以上時間を取られ、実際の
商談は10分程度で後は、その方の趣味の釣りや野球、時には人生訓なども語るらしく、しかも1週間前
に話した内容と全く同じ話をしてくることもしばしばあるそうだ。
しかし、大切な取引先でもあるためひたすら1時間、時には2時間そうした話を辛抱強く聞いているとか。
彼いわく、最近上司から営業効率が悪いと指摘され、他にも同様の営業先があり効率を上げろといわれ
ても、自分のコミュニケーションスタイルに問題があるのかもしれないが、どのようにしたらよいでしょうか、
とのことだった。
このような状況におかれたとき、あなたならどうしますか?
「その話は先週も聞きましたから、結構です」
「また釣りの話ですか、たまにはサッカーの話でもさせて下さいよ」
仮にそう思っていても、おそらく立場上こうしたことは口には出来ないでしょうね。
ここで大切なのは、そのお客さまと円滑な人間関係を続けるためには、相手と自分の両方を大切にした
コミュニケーションをすることです。
それには、相手をばっさり切り捨てるのもダメだし、自分の意思を隠すのもダメです。
相手の話を聞きつつ自分の主張も忘れない、という会話を意識する必要があるのです。
このように、自分の考えをしっかり主張できる自己表現のことを「アサーション」といいます。
「ヘラブナ釣りのお話は、とても興味がありますが残念ながら次の予定もありますので…」
このように、自分を主張するときには相手への尊重を忘れないようにし、伝えたいことをそのコミュニケー
ション中にしっかり主張することが大切です。
双方がしっかり意見を交換しあえてこそ、コミュニケーションは成り立つものです。
彼の場合、聞き役に徹することでコミュニケーションが円滑になると思っていたようですが、会話の中で
自分も言いたいことを主張できなければ、結局は人間関係も長続きしなくなってしまいます。